医師のつぶやき

循環器内科医から内科医・往診医へ転身することにした医師のつぶやき

急性期医療からの転身理由

循環器内科医は「心臓の病気」を専門とする医師です。

対象とする病気は、心筋梗塞心不全不整脈などです。私が現在勤めているような、急性期治療を担う病院へは、地域のかかりつけ医より、「最近、息切れがあるのですが、原因は心不全でしょうか?」といった紹介状を持った患者さんが受診されます。

心不全には様々な原因があります。例えば、僧帽弁閉鎖不全症という弁膜症によって、心臓に負担がかかり、心臓が対応できなくなり、息切れ症状などを生じます。

まず、その方が心不全かどうか。心不全であれば、その原因がなにかを調べます。原因がわかれば、それに対して治療を行います。原因はあるものの、治療ができない場合は、薬で心臓の負担を取り除く治療を行います。

僧帽弁閉鎖不全症が原因の心不全の場合、薬での治療を行ったり、手術やカテーテル治療を行います。

急性期治療を行う病院では、手術やカテーテル治療が必要かどうかの判断と必要ならそれらを行います。治療後は「治った」ということで、かかりつけ医の先生に治療の継続を依頼します。

しかし、この「治った」が曲者で、実は、そういった手術などをうけた患者さんは、薬での治療の継続が必要な方がほとんどです。「治った」わけではないのです。

上記のような方が当院を受診した場合のスケジュールは

1日目:紹介状を持って外来受診。血液検査、心エコーなどを行い、手術の必要性を判断。必要なければ、かかりつけ医で薬での治療を依頼。今後、当院へは「困ったら」受診。手術が必要なら、説明し、入院の段取り。

2日目:入院

数日後:手術

2週間くらい後:退院

1月後:外来で経過観察。問題なければ1年から2年後に外来受診。

心臓の手術などは行える医師や病院が限られますので、専門的な病院や医師ほど、このように「手術のときだけ」の関わりが多くなります。

私は「その時だけ」「心臓の病気」に関わるのではなく、「その患者さん」との関わりを大切にし、寿命まで病気でなるべく困ることのないように患者さんへ治療を提供したいと考え、一般内科医・往診医へ転身することにしました。